2025年におけるオープンソースクラウドセキュリティツール9選

By 清水 孝郎 - MAY 12, 2025

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本文の内容は、2025年4月29日に Sysdig Team が投稿したブログ(https://sysdig.com/blog/9-open-source-cloud-security-tools/)を元に日本語に翻訳・再構成した内容となっております。

オープンソースのクラウドセキュリティツールは、進化する脅威に対応するために必要な柔軟性、可視性、そして専門知識の共有を組織に提供します。透明性、コラボレーション、そしてコミュニティ主導のイノベーションを特徴としています。

インフラストラクチャーが複数のクラウドにまたがり、ワークロードが動的に変化する環境において、最善の防御策はもはや密室で構築されるものではありません。ランタイム保護からクラウドネイティブなポリシー適用まで、これらのツールはセキュリティチームが現代のクラウド環境を防御する方法を形作っています。

以下に、2025年に必須となる9つのオープンソース・クラウド・セキュリティ・ツールをご紹介します。いずれもコミュニティ主導のイノベーションの力を示すものです。ゼロトラスト・アーキテクチャーの構築、コンプライアンスの自動化、コンテナセキュリティの強化など、どのような場合でも、これらのツールはオープンなコラボレーションの価値を活かしてクラウドスタックのセキュリティを確保するのに役立ちます。

1. クラウド セキュリティ ポスチャー管理 (CSPM) — Open Policy Agent (OPA)

CSPMツールは、クラウド環境に潜む可能性のある設定ミスやコンプライアンスリスクを常にスキャンまたは監視します。企業がパブリッククラウドやマルチクラウドサービスを広く導入する中、新たなセキュリティリスクへの対応は容易ではありません。CSPMツールは、Amazon EC2インスタンスなどのクラウド資産全体の設定ミスを自動的に検出し、対処することで、その負担を軽減します。このプロアクティブなアプローチにより、セキュリティギャップが悪用される前に特定して修正できるため、安全なクラウド環境を維持するための重要な優位性が得られます。

オープンポリシーエージェント(OPA)

OPA は、クラウド全体のスタックにわたって細かいアクセス制御やセキュリティポリシーを定義・適用できるオープンソースの CSPM ツールです。Rego と呼ばれる宣言型の言語を使用しており、Kubernetes のアドミッションコントロールから API 認可、インフラ構成に至るまで、あらゆるルールを表現できます。

ポリシーをアプリケーションコードから分離することで、OPA はスケーラブルかつ柔軟なポリシー管理を実現します。これにより、クラウドインフラが進化してもセキュリティルールの一貫性を保つことができます。広範な統合サポートとリアルタイムでのポリシー適用機能により、CSPM およびクラウドネイティブガバナンスにおいて信頼性の高いツールとなっています。

2. クラウドワークロード保護とKubernetesセキュリティ — Falco

クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)は、Kubernetes クラスター、コンテナ、仮想化システムを含むオンプレミスおよびハイブリッドクラウド環境で稼働するワークロードを保護する、自動化されたリアルタイムのセキュリティソリューションです。CWPP は、デプロイ前にワークロードを脆弱性スキャンによって積極的に検査し、運用中には継続的なランタイム保護を提供することで、新たに発生する脅威に対応します。ランタイム保護では、実行中のプロセスをスキャンしてアクティブな攻撃の兆候を検出します。ワークロード内の不審な挙動を監視することで、標的型攻撃やゼロデイ攻撃に対する防御を強化します。

Falco

Sysdig によって開発された Falco は、ホスト、コンテナ、Kubernetes、クラウド環境全体にわたるランタイム保護を提供する、オープンソースのクラウドネイティブセキュリティツールです。Linux カーネルイベントや、コミュニティが作成したプラグインを通じたその他のデータソースを活用し、コンテキストメタデータを付加することで異常や不審な活動を検知し、リアルタイムの脅威検知を実現します。

Falco のカスタムルールにより、予期しないネットワーク接続からコンテナの権限昇格に至るまで、さまざまな事象を検知することができ、脅威の発生と同時に検出・対応が可能になります。Sysdig はまた、Falco のルールを Sysdig Secure の検知エンジンの基盤として活用しており、オープンソースの革新をエンタープライズレベルのクラウドセキュリティへと展開しています。

3. Infrastructure as Code (IaC) セキュリティ — Checkov

Infrastructure-as-Code(IaC)は、あらゆる種類の環境における IT プロビジョニングおよび管理戦略の中核的な要素となっています。クラウド、オンプレミス、またはその組み合わせでアプリケーションを運用する場合でも、IaC はインフラのセットアップやアプリケーションの大規模なデプロイを自動化するために不可欠です。簡単に言えば、IaC は IT 環境の構築において、エンジニアがリソースの構成方法を定義した機械可読なポリシーファイルを記述するアプローチであり、各リソースを手動で構成するのとは対照的です。

しかし、IaC テンプレートの誤った構成は、機密データの漏洩、過度に許可されたアクセス制御、保護されていないワークロードなど、スケールに応じた深刻なセキュリティリスクを引き起こす可能性があります。Checkov は、これらのリスクへの対処を支援します。

Checkov

Checkovは、IaC構成をスキャンして誤設定を検出することで、本番環境への脆弱性が顕在化する前に発見するのに役立ちます。Terraform、CloudFormation、Kubernetesなどのプラットフォームをサポートし、マニフェストやテンプレート内のセキュリティリスクを検出します。

Checkovは共通のコマンドラインインターフェース(CLI)を備えており、Helm、ARMテンプレート、サーバーレスフレームワークなど、複数のフレームワークにわたるスキャン結果の管理と分析を容易にします。安全でないアクセス制御、ポリシー違反、コンプライアンスギャップなどの問題をフラグ付けすることで、自動化されたセキュリティチェックによってIaCを強化できます。

4. アイデンティティとアクセス管理(IAM) — Keycloak

クラウド環境において、IAMは誰が何にアクセスできるかを制御する基盤となります。ユーザー、アプリケーション、サービスの認証方法と、実行権限を付与するアクションを管理します。IAMポリシーは、権限、ロール、アクセスルールも定義し、信頼できるIDのみがクラウドリソースにアクセスできるようにします。

一元化されたIAMはクラウドセキュリティにとって不可欠です。これがなければ、組織は一貫性のないアクセス制御、断片化されたポリシー、そして不正アクセスのリスク増大に直面します。一元化された認証と統合されたアイデンティティポリシーを適用することで、可視性が向上し、一貫性のある適用が可能になり、アイデンティティベースの脅威に対する保護が強化されます。

Keycloak

Keycloakは、最新のアプリケーションやサービスに堅牢な認証・認可機能を提供するオープンソースのIAMソリューションです。Keycloakを使用すると、クラウドとオンプレミスのシステム全体にわたって、SSO、アイデンティティ・フェデレーション、そして一元的なユーザー管理を統合できます。

Keycloakは、OAuth 2.0、OpenID Connect、SAMLといった複数の認証プロトコルを標準でサポートしており、様々な環境に対応する汎用性の高いソリューションです。これにより、ID管理を一元化し、ユーザーアクセスポリシーを環境全体で一貫して適用できるようになります。

5. シークレット管理 — HashiCorp Vault

シークレットとは、API、SSH、暗号化キーなどのデジタル認証情報であり、特定のリソース、システム、データへのアクセスを許可します。シークレットは、ユーザーとデバイスまたはマシン間の通信を開始し、それらが信頼できるエンティティであることを確認します。 

シークレット管理とは、組織がシークレットやデジタル認証情報を安全に保存、取得、管理するために使用する、一元化されたツール、手法、ワークフローのセットを指します。これにより、ハードコードされた認証情報に伴うリスクを回避できます。ハードコードされた認証情報は機密情報を漏洩させる可能性があり、攻撃者の格好の標的となります。シークレットを適切に管理することで、組織はアクセスを承認する前に本人確認と検証を行い、認証情報の安全性を確保することで、ITセキュリティ体制全体を強化できます。 

HashiCorp Vault

HashiCorp Vaultは、シークレットと暗号化キーへのアクセスを安全に保存、管理、制御するオープンソースのIAMツールです。保存中のシークレットを暗号化し、きめ細かなポリシーと認証方法を通じてアクセスを厳密に制御します。

Vaultは、一時的な認証情報をオンデマンドで生成することで動的なシークレットをサポートし、漏洩リスクを軽減します。また、重要なIDセキュリティのベストプラクティスである自動キーローテーションと失効も提供します。API駆動型ワークフローとクラウドプラットフォームとの統合をサポートすることで、Vaultは分散環境や動的環境においてもシークレットを確実に保護します。

6. SIEMとログ管理 — Wazuh

セキュリティ情報イベント管理(SIEM)システムは、組織のインフラストラクチャー全体からセキュリティデータを収集、分析、相関分析する一元管理プラットフォームです。サーバー、アプリケーション、ネットワークデバイス、クラウドサービスからのログ、イベント、アラートを集約し、セキュリティインシデントをリアルタイムで可視化します。SIEMは、組織が脅威を早期に検知し、より迅速に対応し、コンプライアンス要件を満たすことを可能にするため、クラウドセキュリティにとって不可欠です。

Wazuh

Wazuhは、脅威検出、インシデント対応、コンプライアンス監視機能を提供するオープンソースのSIEMおよび拡張検出・対応(XDR)ツールです。エンドポイント、クラウド環境、ネットワークデバイスからデータを収集し、相関分析することで、不審なアクティビティやセキュリティイベントを検出します。

統合されたログ分析、ファイル整合性監視、侵入検知機能を備えたWazuhは、組織が異常を検出し、インシデントを調査し、リアルタイムで対応できるよう支援します。また、コンプライアンス監査機能も提供しており、PCI DSS、GDPR、HIPAAなどの規制への準拠を支援します。Wazuhのスケーラビリティとモジュール型アーキテクチャは、クラウドネイティブ環境とハイブリッド環境の両方におけるセキュリティ管理のための強力なツールとなっています。

7. ネットワークセキュリティと可視性 — Zeek

クラウド環境における脅威の検知と防御には、ネットワークセキュリティと可視性が不可欠です。組織がクラウドネイティブアーキテクチャーを採用するにつれて、攻撃対象領域が拡大し、悪意のあるアクティビティの発見が困難になります。ネットワークの詳細な可視性により、トラフィックフローを監視し、異常を特定し、疑わしい動作をリアルタイムで検知することが可能になります。

ネットワークトラフィックを監視することで、データの持ち出し、ラテラルムーブメント、コマンド&コントロール(C2)通信といったステルス性の高い脅威を明らかにすることができます。ネットワーク全体の可視性を確保することは、フォレンジックやインシデント対応の面でも大きな違いをもたらします。これにより、セキュリティインシデントをより効果的に調査するために必要なコンテキストを得ることができます。

Zeek

Zeekは、クラウドとオンプレミスのネットワークアクティビティを可視化するオープンソースのネットワークトラフィック分析ツールです。トラフィックをパッシブに監視し、接続ログ、DNSリクエスト、SSL証明書、HTTPトランザクションなどの詳細なメタデータを抽出します。

Zeekの拡張可能なスクリプト言語では、カスタム検出ルールを作成できるため、ネットワークの異常や潜在的な脅威の検出に最適です。不審なパターン、コマンドアンドコントロールトラフィック、ポリシー違反を特定し、悪意のあるアクティビティを発生時に検知するのに役立ちます。豊富なメタデータと柔軟なアーキテクチャーを備えたZeekは、クラウドネットワークセキュリティのための強力なツールであり、インシデント調査を有益な情報で補完します。

8. クラウド ペネトレーションテスト — クラウドセキュリティスイート

クラウドペネトレーションテストは、クラウド環境に対する実際の攻撃をシミュレートし、悪意のある攻撃者よりも先に脆弱性を特定する、プロアクティブなセキュリティ対策です。組織のクラウドインフラへの依存度が高まるにつれ、設定ミス、安全でないAPI、そして悪用可能な脆弱性を特定するために、定期的な侵入テストが不可欠になっています。

制御された侵入テストを実行することで、クラウド防御を検証し、検知・対応メカニズムの有効性を評価し、将来の脅威に対してクラウド環境を強化することができます。また、プロアクティブなテストは、組織がコンプライアンス要件を満たし、全体的なセキュリティ耐性を向上させることにも役立ちます。

Cloud Security Suite

Cloud Security Suiteは、クラウド環境における侵入テスト専用に設計されたオープンソースツールキットです。AWS、Azure、GCP環境のセキュリティ体制をテストするための幅広いモジュールを提供し、設定ミス、アクセス制御の弱点、悪用可能な脆弱性の発見に役立ちます。

このスイートでは、クラウド資産のスキャン、IAMポリシーの検証、ストレージとネットワークのセキュリティ評価が可能です。モジュール設計により、カスタムテストシナリオの作成が可能で、さまざまなクラウドインフラストラクチャーに柔軟かつ適応可能です。

9. 継続的なコンプライアンス — OpenSCAP

クラウド環境では、あらゆる組織にとって規制コンプライアンスは継続的な要件です。CIS、NIST、GDPRといったフレームワークは常に進化しており、継続的なコンプライアンスを維持するには、自動化されたリアルタイムチェックが不可欠です。 

継続的なコンプライアンスは、設定ミス、脆弱性、セキュリティポリシーからの逸脱を、問題となる前に検出し、対処を支援します。CI/CDパイプラインと本番環境に自動コンプライアンススキャンを統合することで、組織は業界規制への遵守を積極的に証明し、高額な罰金を回避することができます。

OpenSCAP

OpenSCAPは、セキュリティポリシーの評価を自動化するオープンソースのコンプライアンススキャンおよび脆弱性評価ツールです。NISTが管理するSecurity Content Automation Protocol(SCAP)標準に基づき、クラウドワークロード、コンテナ、ホストシステムを業界ベンチマークと比較評価します。OpenSCAPは、非準拠の構成を詳細にレポートし、問題への迅速な対応を支援する修復ガイダンスを提供します。CIS、NIST、PCI-DSSといった広く認知されたフレームワークをサポートすることで、OpenSCAPはコンプライアンスへの取り組みを効率化し、監査のオーバーヘッドを削減し、組織のセキュリティ体制を強化します。

まとめ

ここまで紹介してきたオープンソースのクラウドセキュリティツールは、クラウドネイティブ環境を保護しようとする組織にとって非常に価値のあるものです。これらはコスト効率に優れ、コミュニティ主導で提供されるソリューションであり、セキュリティチームが脆弱性に対処し、脅威を検出し、規制遵守を維持するうえで役立ちます。これらのツールを活用することで、組織のセキュリティポスチャーを大幅に強化し、防御策を柔軟にカスタマイズすることが可能になります。

しかし、オープンソースのセキュリティツールを使用するにあたっては、注意すべき重要な点がひとつあります。それは、パッチの適用、保守、コミュニティへの参加などを継続的に行うための専任の努力が必要であるということです。より効率的かつスケーラブルなアプローチを必要とする場合や、オープンソースツールの保守にリソースを割く余裕がない組織にとっては、ベンダーが管理するクラウドセキュリティプラットフォームの方が適しているかもしれません。

Sysdig Secureは、クラウドネイティブ環境向けの包括的なセキュリティを提供し、脅威検知、コンプライアンス監視、インシデント対応のための単一の統合ソリューションを提供します。その強力な機能により、組織はコンテナ、Kubernetes、クラウドインフラストラクチャー全体にわたってセキュリティをシームレスに管理できます。

Sysdig がクラウド セキュリティポスチャーをどのように強化できるかについて詳しくは、Sysdig Secureをご覧ください。